ブラジル債の利金

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2016年1月1日より証券税制が変わります。

これまで株式などの投資商品と区別されていた国債や公募社債など一定の公社債に対する課税方式が、
一部、源泉分離方式から申告分離方式に変更され、原則として確定申告で納税することになります。

具体的にお問い合わせがある金融商品のひとつとして、ブラジル債があります。

ブラジル債は金利の高さが魅力で、これまで利金については実質的に源泉徴収もされず、投資家として
は税務メリットがある金融商品でした。

まず、こちらの仕組みを見て行きましょう。

外国債券の利子については、通常は、源泉徴収された外国税額と源泉徴収された日本の税額が合計で
20%になるように日本の税金を天引きします。これを差額徴収方式といいます。
 
例:
5,000,000円の外国債券
年利が10%
外国の源泉徴収税率が10%

例えば、上記の例を考えてみましょう。

利金500,000円から外国税が50,000(10%)が徴収され、一方
で日本の税金は、500,000円×20%−外国税50,000=50,000円が徴収されます。

投資家の手取りは、500,000円−外国税50,000円-国内税金50,000円=400,000円になります。

ただし、ブラジルは日本との間で租税条約があり、実際には外国税を天引きしないけれども、20%の
外国税が天引きされたとみなして扱います。

これをタックス・スペアリング・クレジット(みなし外国税額控除)といいます。

みなし外国税額控除は、投資先の開発途上国が自国の経済発展のため、一定の要件を備えた外国から
の投資について税制上の優遇措置を設けており、かつ、外国と日本との間にみなし外国税額控除の規
定を有する租税条約が締結されている場合に適用されます。

したがって、ブラジル債の場合は、日本での税金は500,000円×20%−みなし外国税100,000円=0円と
なり税金は徴収されず、投資家の手取は500,000円−外国税0円−国内税金0円=500,000円となります。

つまり、これまでブラジル債は、金利が高い一方で、みなし外国税額控除により利金に対して課税さ
れず利回りの良い商品でした(為替リスクはあります)。

さて、平成28年1月以降の取扱ですが、ブラジル債も含めて、外国利付債は、国内公社債とともに、
申告分離課税になるとされています。

さらに、源泉税は、差額徴収方式から税額控除方式になります。
 
ただしブラジルの外国税は、20%の100,000円が天引きされたとみなすことは現行制度と変わりま
せん。*ブラジルとの租税条約が変更される場合はこの限りではありません。

そして、国内の税金は、500,000円×20%=100,000円が天引きされます。
 
この場合の投資家の手取額は、500,000円−国内税金100,000円=400,000円となります。
 
従来だと何もしなくても手取りが500,000円でしたが、税制改正後は手取りが400,000円になって
しまいます。確定申告はしなくても構いませんが、従来の様に外国税額控除の適用を受けようとす
ると、確定申告をする必要があります。

そこで問題になりそうなのが、パートをしている主婦が投資をしている場合の配偶者控除要件です。

源泉分離課税とされる公社債の利子については配偶者控除要件の所得に加算する必要はないのですが、
今後、申告分離課税となると、配偶者控除要件の所得として加算されます。

したがって、給与収入103万円以下で配偶者控除を受けている主婦の方が、ブラジル債の利金を確定
申告して外国税額控除を受けようとすると、配偶者の所得金額によって、配偶者控除を受けられなく
なる可能性が出て来ます。
 
つまり、今後は、ブラジル債の利金を確定申告して還付される金額と、配偶者控除がなくなり夫の方
で増える税額との比較が必要になってくると思われます。

平成28年1月1日より適用される証券税制の詳細については、顧問税理士にご確認ください。

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