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2026.07.05(日)

新規上場会社のエクイティストーリー【バトンズ 554A】| スタートアップ

新規上場会社のエクイティストーリー【バトンズ 554A】| スタートアップ

こんにちは。スタートアップ東京です。

スタートアップ支援を専門とする公認会計士・税理士として、私たちは定期的に新規上場企業の公開資料を読み解き、その裏にある「投資家を熱狂させた物語(エクイティ・ストーリー)」を分析していきます。

第5回目は、2026年4月21日に東証グロース市場へ上場した株式会社バトンズ(証券コード:554A)です。

M&A総合プラットフォーム「BATONZ」を運営するバトンズ。吸収金額わずか5億円という超小型案件にもかかわらず、公開価格660円に対し初値は1,674円(初値騰落率+153.64%)という驚異的な市場評価を受けました。上場直後に時価総額は公開時の約2.5倍に膨らみ、「事業承継テーマへの市場の期待値の高さを見せつける形となった」と多くのアナリストが指摘しています。

なぜバトンズは、投資家から圧倒的な評価を受けたのか。
その答えは、「後継者不在の会社に、未来を届ける」という、一つのシンプルな問いにあります。

BATONZ’S “ONE BIG IDEA”

株式会社バトンズ(554A)

後継者不在の会社に、
未来を届ける。

M&Aを、一部の大企業だけの手段から、
すべての経営者が使える
社会インフラへ。

優れたエクイティ・ストーリーには、たった一つの「ビッグ・アイデア」が必要です。バトンズの場合、それは「M&Aという手段を、価格でも規模でも諦めずに済む世界をつくること」でした。

伝統的なM&A仲介会社が「数億〜数十億円の案件」を対象としてきた中、バトンズは「年商1億円以下の小規模案件」にまで手を伸ばし、売り手の費用を完全無料にすることで、これまでM&Aを諦めていた層に市場を開放しました。

1. 共感を生む「エクイティ・ストーリー」

投資家は論理で納得し、感情で決断します。
ですから、優れたエクイティ・ストーリーは、必ず「原点の問い」から始まります。

バトンズの場合、その問いは日本の中小企業経営者なら誰もが、心のどこかで感じている、あの場面から始まります。

原点の問い

「なぜ、30年かけて育ててきた会社が、
後継者がいないだけで、
消えなければならないのか。」

── バトンズが2018年の創業以来、問い続けてきた問い。

日本では、経営者の高齢化が進む中、後継者が見つからないまま黒字にもかかわらず廃業を選ぶ中小企業が後を絶ちません。懸命に育ててきた会社が、「誰かに引き継ぎたい」という思いを抱えながら、静かに市場から消えていく。そんな現実が、今この瞬間も続いています。

廃業が意味するのは、ただ会社がなくなることではありません。雇用が失われ、技術が失われ、地域の取引網が寸断されます。一人の経営者の「諦め」が、地域経済全体に波紋を広げるのです。

しかし、これまでM&Aによる事業承継は「大企業のもの」でした。日本M&Aセンターに代表される仲介会社は、数億〜数十億円規模の案件を人的アドバイザーが個別に担うモデルです。成功報酬は売買価額の5〜10%、最低手数料も数百万円規模。年商数千万円の小規模企業では、M&A費用の方が高くついてしまう——そんな構造的な矛盾が長年放置されてきました。

バトンズはその矛盾に、プラットフォームという解答を出しました。

MISSION

「M&Aを、一部の大企業だけの手段から、
すべての経営者が使える社会インフラへ。

売り手は完全無料。買い手は成約価格の2%。
誰もが、事業の未来を自分で選べる世界をつくる。」

このミッションに共感した投資家は、バトンズを「M&A仲介会社」ではなく、「日本の中小企業の廃業問題を解決する社会インフラ企業」として評価したはずです。

そしてこのミッションは、言葉に留まりませんでした。数字が、その証明をしています。

+153%

初値騰落率
(公開価格660円→初値1,674円)

30万人+

買い手候補登録数
(国内最大級)

81%

粗利率
(プラットフォーム特有の高収益)

+45%

売上高成長率
(2025年3月期)

Source: 有価証券届出書、同社IR資料、IPO各社資料

2. 記憶に残る「成長戦略」

感情で共感を得た後は、論理で「勝ち筋」を示す番です。
バトンズの成長戦略が秀逸なのは、「社会課題の構造的な追い風」を土台に、「ネットワーク効果」と「SaaSという隠れた高収益柱」を重ねた点にあります。

① 「後継者不在の廃業危機」という構造的な追い風

バトンズが競合と最も差別化されているポイントは、技術でも価格でもありません。「社会課題の規模感と緊急性」です。

団塊世代の経営者が一斉に引退期を迎える2025〜2035年の10年間は、日本の事業承継問題が最も深刻化するタイミングです。経済産業省の試算では、後継者問題が解決されなければ2025年までに約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるとされています。この「構造的かつ不可逆な社会課題」が、バトンズに向かい風ではなく追い風として吹き続けます。

追い風の3要素

① 団塊世代の引退加速(2025〜2035年がピーク)
② 政府の中小M&A推進方針(中小M&Aガイドライン整備)
③ M&Aに対する心理的ハードルの低下(「廃業より譲渡」という意識変化)

② 「売り手完全無料」が回すネットワーク効果

バトンズのビジネスモデルで、投資家が最も評価したポイントは「売り手完全無料」という設計です。

着手金なし、月額なし、中間金なし、成約手数料もなし。売り手は一切お金を払わずに、30万人の買い手候補にアクセスできます。これは伝統的なM&A仲介では考えられない設計です。なぜこれが可能かといえば、プラットフォームモデルでは「買い手側(成約価格の2%)」から収益を得るからです。

この設計が生み出すのは、強力なネットワーク効果です。

ネットワーク効果の好循環

売り手が
無料で集まる
良い案件が
増える
買い手候補が
集まる
売り手が
信頼して登録する
成約実績が
積み上がる
より多くの
成約が生まれる

この好循環をいち早く回し始めたバトンズは、5年連続成約実績No.1という地位を確立しました。累計4万件超の案件と30万人超の買い手候補——この規模のネットワークは、後発が数年で追いつけるものではありません。FUNDINNOの「8年分の先行者優位」と同じ構造的な堀が、ここにあります。

③ SaaSが生む粗利81%の高収益構造

投資家が最も期待する「アップサイド(上振れ余地)」は、収益構造の拡張性です。バトンズが提示した戦略で特筆すべきは、プラットフォーム収益に加えた「M&A SaaS」という第二の収益柱です。

M&A SaaSとは、M&Aを支援する専門家(税理士・公認会計士・弁護士・M&Aアドバイザーなど)向けに提供するクラウドツールです。案件管理・マッチング支援・デューデリジェンス補助などの機能を月額課金で提供し、専門家がバトンズのプラットフォームを使い続ける仕組みを作っています。

2本柱の収益構造

① M&Aプラットフォーム収益:買い手の成約手数料(成約価格の2%)
② M&A SaaS収益:支援専門家の月額利用料(ストック型)
→ 両者が掛け合わさることで粗利率81%という高収益構造を実現

SaaS収益は、取引が成立しなくても月額で積み上がります。専門家がプラットフォームを日常業務に組み込むほど解約率は下がり、収益は安定していきます。この「プラットフォーム×SaaS」の二重構造こそが、売上高+45%・営業利益+600%・営業利益率18%という高収益成長を可能にした根拠です。

【財務ハイライト】

  • 売上高:20.0億円(2025年3月期、前期比+45%)
  • 営業利益:3.6億円(前期比+600%)、営業利益率18%
  • 粗利率:81%(プラットフォーム特有の高収益構造)
  • 初値騰落率:+153.64%(公開価格660円→初値1,674円)
  • 時価総額:約77.5億円(初値ベース)

【起業家への問い】

あなたの「One Big Idea」は何か?

バトンズの事例が教えてくれる、大切なこと。それは、投資家が買うのは今の業績ではなく、「未来の物語」だということです。

バトンズが手がけているのは、単なるM&Aマッチングサイトではありません。「後継者不在による廃業を、M&Aというインフラで解決する」という社会的命題です。その命題に、粗利81%・成約No.1・ネットワーク効果という「証拠」が重なったとき、投資家は公開価格の2.5倍を超える評価を与えました。

いまから、会社設立をして、資金調達や上場を目指す起業家の皆さま。
あなたの事業は、一言で語れる「社会への問いかけ」になっていますか?
その問いに答えることが、最も強力なエクイティストーリー(equity story)の出発点です。

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あおばアドバイザーズ株式会社は、エクイティストーリーの設計から、
投資家向け資料の作成まで一貫して対応しています。
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AUTHOR

原田 潤(Jun Harada)

公認会計士・税理士|神宮前あおば税理士法人

監査法人にてIPO支援、野村證券企業情報部にてM&Aアドバイザリー、ヤフー・ライブドアにて経営企画・M&A業務に従事後、シェアリングエコノミー領域で起業。現在は神宮前あおば税理士法人で、持続可能な企業価値向上をテーマに、スタートアップ企業を支援。上場会社の社外役員を歴任。