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2025.03.22(土)

会社設立時から上場(IPO)を狙うなら知っておきたい、後悔しない「税理士選び」の基準

会社設立時から上場(IPO)を狙うなら知っておきたい
後悔しない「税理士選び」の基準

上場を見据えてスタートアップを立ち上げるなら、税理士選びは会社設立の初日から重要な経営判断です。創業期の資本政策や会計処理の選択は「後戻りできない」ことも多く、選択を誤ると上場審査で致命的な障害になるケースも少なくありません。本記事では、IPOを最初から目指す起業家が税理士に求めるべき6つのポイントを、公認会計士・税理士の視点から解説します。

POINT 1 経営者の伴走者・壁打ち相手になれるか

スタートアップの創業者は、事業を成長させながら、同時にいくつもの課題を抱えています。経営チームの採用、プロダクト開発の方向性、次の資金調達のタイミング、投資家とのコミュニケーション──これらのすべてに、正解のない意思決定が求められます。

そんな場面で、数字と経営の両方を知る税理士が「壁打ち相手」や「相談相手」になってくれるとしたら、どれほど心強いでしょうか。多くのスタートアップを支援してきた経験を持つ税理士は、「他社ではこういう判断をした」「このフェーズではこの選択が多い」という実例を持っています。それが、孤独になりがちな創業者の意思決定を支える力になります。

👥
採用・組織
経営チームの構成や報酬設計について、税務・労務の観点からアドバイス
📊
資本政策・資金調達
将来のIPO・M&Aを見据えた株主構成・希薄化の検討、調達タイミング・手段の選択、投資家との交渉における財務面のサポート
🧭
経営判断
新規事業・ピボット・提携など、数字に基づいた選択肢の整理

税理士との関係は、月次の数字を確認するだけの「代行業者」ではなく、気軽に連絡できる「経営の相談窓口」であることが理想です。特に上場を目指すスタートアップでは、経営の各フェーズで意思決定の質が結果を大きく左右します。事務所の規模や対応の速さ、コミュニケーションのしやすさも、税理士選びの重要な基準です。

POINT 2 創業期のバックオフィス構築力

会社設立直後のスタートアップは、限られたリソースで事業立ち上げに全力を注ぎます。経理・税務は後回しになりがちですが、将来のIPOを見据えるなら、この基盤を早期に・効率よく整えることが極めて重要です。

バックオフィス構築で税理士に期待できること
  • 月次報告の早期化:経営判断に必要な財務数値をタイムリーに把握できる体制を創業直後から整備。数字に基づいた意思決定を促します
  • 会計処理の透明化:初期の経費処理・会計基準の適用を明確化し、将来の監査に耐えうる正確な記録を設立時から確立
  • 業務フローの効率化:クラウド会計ソフトの選定・導入から、経費精算・請求書発行の自動化まで、属人化を防ぎスケーラブルな経理体制を構築

クラウド会計(freee・マネーフォワード)はAIを活用した効率的なバックオフィス構築に精通した税理士は、創業期の貴重な時間とコストを節約し、社長が本業に集中できる環境を作ります。

📎 関連記事:freeeとマネーフォワードの機能・料金を詳しく比較した「スタートアップ向けクラウド会計ソフト比較|freee vs マネーフォワード」も合わせてご覧ください。

POINT 3 シード期からIPOまでのファイナンス対応力

上場を目指すスタートアップにとって、資金調達は事業成長の生命線です。会社設立の初期段階から、将来の資本政策・税務戦略を適切に設計するには、スタートアップ特有の課題を深く理解した税理士が不可欠です。

スタートアップのファイナンスで押さえるべき専門分野
  • ストックオプション:税制適格SOの設計・有償SOの会計・税務処理。令和5・6年度改正による要件緩和を踏まえた最新の設計支援
  • 株主契約・株式譲渡:創業者間契約の整理と、将来の株式譲渡が発生した際の税務影響を初期から整理。予期せぬトラブルの予防
  • 資本政策:資金調達計画の策定段階から参画。エクイティ・デットのバランス、増資時の税務メリット・デメリットを長期視点でアドバイス
  • エンジェル税制:個人投資家からの資金調達における税制優遇(エンジェル税制)の適用要件・手続き支援でシード期の調達を円滑化
  • M&A・エグジット対応:IPOだけでなく企業売却(M&A)の可能性も視野に、株価算定・税務シミュレーション・デューデリジェンス対応まで包括的に支援

単なる税務申告に留まらず、会社設立のその日から成長戦略・資金調達計画に深くコミットできる税理士を選ぶことが、成功への近道です。

📎 関連記事:ストックオプションの種類・税制改正の詳細は「税制適格ストックオプションが使いやすくなった|令和5・6年度改正と有償SOとの使い分け」で詳しく解説しています。

📎 関連記事:税理士の専門性はバックグラウンド(経歴)によって大きく異なります。監査法人・投資銀行・税務専門など8つの視点で解説した「スタートアップの税理士選び|バックグラウンドで選ぶ8つの視点」も合わせてご覧ください。

POINT 4 株価算定の適正な処理

会社設立時・その後の資金調達局面において、株価算定は資本政策とストックオプション発行の基盤となります。特に未上場企業の株価は市場取引がないため、専門的・客観的な評価が求められます。

⚠️ 株価算定を曖昧にすると後で問題になる

行使価格が「付与時の公正な時価以上」でなければ、税務調査で行使益が給与所得(最大55%課税)と認定されるリスクがあります。また、IPO審査では主幹事証券・取引所がSO発行時の株価算定の合理性を確認します。算定根拠の文書が残っていない場合、上場審査に影響する可能性があります。

適正な株価算定のために確認すべき点
  • 優先株式と普通株式の評価:種類株式に付与された特別な権利(残余財産分配優先権)を評価に適切に反映
  • 少数株主権・議決権制限の考慮:株式に付随する特別な権利が株価に与える影響を考慮する
  • 有償ストックオプションの適正価格設定:発行時の公正な評価額を算定し、会計・税務上のリスクを回避

株価算定書は、将来の上場準備において、監査法人・主幹事証券から提出が求められるため、資金調達・新株予約権の発行の都度、整備しておくことが重要です。

POINT 5 エクイティストーリーの構築支援とVC紹介

投資家を惹きつけ、資金調達を成功させるためには、財務諸表を提示するだけでなく、魅力的な「エクイティストーリー」を語ることが不可欠です。エクイティストーリーとは、企業の将来性・市場での競争優位性・財務戦略の方向性を一貫した物語として伝えることです。

エクイティストーリー構築で税理士に期待できること
  • 資本政策に基づいたストーリーテリング:成長戦略と連動した資本政策を投資家が共感しやすい形でまとめ。事業計画策定段階から投資家視点を取り入れた支援が可能
  • 投資家向け資料の財務部分サポート:ピッチデックの財務セクション作成・数値の整合性確認を、豊富な支援実績をもとにサポート
  • VC・エンジェル投資家の紹介:事業フェーズ・ニーズに合致する投資家のネットワークを活かし、資金調達の機会を広げる。設立初期から適切な投資家との出会いをサポート

資金調達は経営の重要な局面です。単なる会計知識だけでなく、投資家視点に立った戦略的な支援を受けられる税理士を選ぶことが、創業初期からの資金調達成功の鍵となります。

📎 関連記事:エクイティストーリーの構成要素・IPOプロセスでの活用タイミングを詳しく解説した「上場準備企業のエクイティストーリーとは|主幹事選定・ロードショーに向けたIR戦略」も合わせてご覧ください。

POINT 6 ショートレビューに備えた監査法人対応力

IPOを目指す企業にとって、将来の監査法人との連携は避けて通れません。上場企業の会計基準に適合するためには高度な専門知識と実務経験が求められ、その準備は創業期から始まっています。

特に監査契約前に行われる「ショートレビュー」では、監査法人が会計処理・内部統制・管理体制を包括的に確認します。設立初期の会計処理に問題があると、このタイミングで遡及修正が必要になるケースがあり、上場スケジュールに大きな影響を与えます。

IPO準備を見据えた監査法人対応でできること
  • 専門的な会計処理への対応:税効果会計・資産除去債務・減損会計・リース会計など、上場企業特有の会計処理を設立時から適切に指導
  • 監査法人との橋渡し:将来の監査法人からの指摘事項に対し、会社に代わって説明・交渉を支援。監査プロセスがスムーズに進行するよう初期から会計処理方針を整備
  • 内部統制(J-SOX)の構築支援:IPO審査を見据えた内部統制の整備について、設立初期から意識した助言を実施

監査法人対応の経験が豊富な税理士・公認会計士を選ぶことで、会社設立時から、税務申告だけではなく将来の上場準備を見据えた会計処理を行い、上場準備を効率的・確実に進めることができます。

まとめ:創業初日から、6つのポイントで税理士を選ぼう

上場を目指すスタートアップが税理士に求めるポイントをまとめます。

POINT 1
経営者の伴走者になれるか:多様な事例を知り、採用・資金調達・意思決定の壁打ち相手として機能できるか
POINT 2
バックオフィス構築力:クラウド会計の活用・月次決算の早期化など、効率的な経理体制を設立初期から整備できるか
POINT 3
ファイナンス対応力:SO・エンジェル税制・資本政策・M&Aなど、スタートアップ特有の資金調達に精通しているか
POINT 4
株価算定の適正処理:VC・監査法人も納得する客観的な株式評価を文書化し、税務・IPOリスクを回避できるか
POINT 5
エクイティストーリーとVC紹介:資金調達に向けた投資家視点の戦略支援とネットワークを持っているか
POINT 6
監査法人対応力:ショートレビューを見据え、会社設立時から、上場準備で後日問題にならない会計処理を指導できるか

これら6つのポイントを総合的に考慮し、自社の成長フェーズと目標に合致した税理士を選ぶことで、会社設立のその日からIPO成功への確実な道を歩むことができます。

この記事の著者
原田 潤(Jun Harada)
公認会計士・税理士/あおば国際会計事務所
監査法人にてIPO支援、野村證券投資銀行部門でM&Aアドバイザリー業務に従事する。その後、ヤフー・ライブドアで経営企画・新規事業開発・M&A業務・事業再生を担当する。撮影サービスでの起業を経て、2012年にあおば国際会計事務所を開設。2014年にあおばアドバイザーズ株式会社を設立し、2018年に神宮前あおば税理士法人を共同設立。IT企業/投資銀行/監査法人/起業で培ったノウハウと経験を基に、ファイナンスと会計・税務サービスを提供している。上場会社の社外役員を歴任。

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